弥生時代から連綿と伝わる島根の酒づくり
島根は大量の銅剣、銅鐸の出土した出雲荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡、朝鮮半島を起源とする四隅突出墳丘墓遺跡の存在など、弥生時代に大きく発展した文化を持っています。
お酒についても日本最古の歴史書「古事記」の出雲神話に素盞鳴尊がヤマタノオロチを退治した「ヤシオリノ酒」。「出雲国風土記」でも“佐香の河内で神々が集って御厨を建てて、酒を造って酒宴を開いて…”とあります。それらを示すように出雲大社、須佐神社には、中国東北地方を起源に持つ“糜醴(びれい)”の酒が祭祀の一夜酒として、佐太神社には中国長江を起源にする“醴(ふんれい)”の酒が祭祀用として今に伝わっています。
中国浙江省より伝わった“灰持酒(あくもちざけ)”は“出雲地伝酒“として発達。佐香神社に伝わる“濁酒”は奈良天平時代の酒造りによく似ています。
このように島根には弥生時代から脈々と続く多様な酒づくりが伝わっています。
これが“島根は日本酒発祥の地”という所以です。
【参考文献】
- 古事記
- 日本書紀
- 播磨国風土記
- 常陸国風土記
- 出雲国風土記
- 豊後国風土記
- 肥前国風土記
酒造りの神「
佐香神社(松尾神社)
奈良時代(748年)に編纂された出雲国風土記で、「この地(佐香郷)に神々が集まって酒造りを行い、180日にわたり酒宴を開いた」という記述が残る古社。古くから全国で酒造りに携わる人たちの信仰を集めている。
神社自体が、特別に1年で1石(180ℓ)酒造免許を受けており、宮司が杜氏を務めてその年の濁り酒を醸し、神様へ奉納。毎年10月13日の秋季大祭で、参拝客に振舞われる。
- 祭神
- 久斯之神(主祭神)くすのかみ
- 大山咋命 おおやまぐいのみこと
- 天津彦彦火瓊瓊杵尊
- 木花咲耶姫之命
- 例大祭
- 10月13日〈どぶろく祭〉
住所:島根県出雲市小境町108
神在月に集まった神々が最後の酒宴〝
万九千神社
斐伊川の畔に鎮座する社は、旧暦10月の神在月に、全国から出雲に集まった神々が神議を終えた後、最後にお立ち寄りになる神社。神々はこの地で酒を酌み交わしながら、明年の再会を約束して帰途に着かれる。
直会とは、「打ち上げ」や「宴会」というだけでなく、御神酒をいただきながら日常生活に戻る心の準備をする時間と空間を共有し、神と神、神と人が直り会うという本来の意味を教えてくれる。神在月26日の大祭は「まんくせんさん」「からさでさん」と呼ばれ、多くの参拝者で賑わう。
- 祭神
- 櫛御気奴命 くしみけぬのみこと
- 大穴牟遅命 おおなむちのみこと
- 少彦名命 すくなひこなのみこと
- 八百萬神 やおよろずのかみ
- 例大祭
- 神在月26日〈神等去出祭からさでさい〉(旧暦10月26日)
住所:島根県出雲市斐川町併川258